「ライラのオックスフォード」(2003年出版)で、どうしてももう一つ書いておかねばならないこと、の巻。 |
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2019年 02月 27日
はい、相変わらずフィリップ・プルマンの話題です。しつこいですが、どうしてももう一つ書いておかねばならないことがあるのです。(笑) それはですね、「ダストの書」第1巻「美しき野性号」(2017年出版-まだ邦訳なし)で、主人公マルコム・ポルステッドが登場するのですが、じつは彼はこれが初登場ではなく、「ライラのオックスフォード」(2003年出版-邦訳されてません)に登場しています。また、「むかし北の国でOnce upon a time in the North」(2008年出版-これも邦訳はありません)の付録にも名前が見えるのです。 はい、「ライラのオックスフォード」は、「琥珀の望遠鏡」事件の2年後に起こったとされています。こうなっております。『彼女(ライラ)とウィルが2年前に別れて以来、何でもないことが彼女に哀れみと悲しみをもたらすのだった。...』同書pp30 年表にこれを書き入れて見ましょう。 1985年初め:ウィル生まれる 1985年8月:ライラ生まれる 1986年2月:ライラ生後6ヶ月、「野性号」事件、マルコムは11歳 (10年経過) 1996年初め:ウィル11歳になる 同年8月:ライラ11歳になる 同年秋:「黄金の羅針盤」事件 1997年初め:ウィル12歳になる 同年春か?:「神秘の短剣」事件 同年8月:ライラ12歳になる、「琥珀の望遠鏡」事件 1999年初め:ウィル14歳になる 同年8月:ライラ14歳になる 同年季節不明:「ライラのオックスフォード」事件、マルコムは24歳のはず (「野性号」事件から20年経過) 2006年:(8月までは)ライラ20歳、「秘密の連邦」事件 そして、この「ライラのオックスフォード」には、あの「美しき野性号」(2017年出版)の主人公マルコム・ポルステッドが、なんと若き「ポルステッド博士」として登場するのです!どうも彼は「野性号」事件以降、刻苦勉励してライラが保護されていたジョーダン・カレッジで博士号を取ったようなんです。 待ってくださいよ。「美しき野性号」では、マルコム少年は、「彼は11歳、好奇心が旺盛で、優しい気質、がっしりとした体つきで、赤毛ginger hairだった。」となっておりました。 「ライラのオックスフォード」ではドクター・ポルステッドはこんな具合に描写されております。「彼は大柄で、赤毛ginger-hairedで、もの柔らかだった。ライラが彼に接する態度よりも、もっと好意的にしたがっているようだった。でも、彼女はいつも丁寧に応対していた。」 これを読んだ時には、ポルステッド博士はライラに気があるのかな、と思っておりました。(笑)じつは彼はライラのガーディアン(保護者)として振る舞っていたのです。しっかし、「ダストの書」が書かれるずいぶん前から、物語の下地は作られていたんですね。 「ライラのオックスフォード」の別の部分(pp19)には、彼がライラの勉強を手伝ってくれたことが書かれています。「ポルステッド博士は二、三年前に、大変だった6週間もの間、仕方なくライラの先生になってくれた。」 また「むかし北の国で」の最後からの一つ目のページの付録は、ライラがポルステッド博士に宛てた手紙のコピーでした。これを読んだ時は、なんじゃいこれは?、と思いましたが(笑)、彼女が自身の博士論文を書くに当たって、彼にアドバイスを求めているといった内容です。この手紙で面白いのは、日付が「1月2日火曜日」となっているんですよ。これが該当する年は、まあいろいろあるけれど、2007年が1番ありそうな感じです。(愉) 記事冒頭の画像は、そのライラからポルステッド博士に宛てられた手紙です。
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by mitch_hagane
| 2019-02-27 10:25
| 5.本
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2019年 02月 26日
ゼノビアはローマ帝国からの不羈独立(ふきどくりつ)を目指し、このためローマ皇帝ルキウス・ドミティウス・アウレリアヌス(214-275)は親臨して、彼女の討伐に赴きます。しかし、ゼノビアの軽装射撃隊と重装騎兵隊に苦戦し、皇帝自身も投げ箭(や)で負傷します。そして、こんな親書をローマに送るのです。「ローマの人民は予(よ)が一婦人を相手に行いつつあるが故にこの戦を軽侮(けいぶ)しあり。彼らはゼノビアの性格と勢力の孰れ(いずれ)をも知らず。...」 しかし善戦及ばず、最後には彼女は捕らえられてローマへ送られます。ルキウスの凱旋行進でひときわ目立っていたのは彼女で、盛装姿の彼女の首には金の鎖が懸けられ、その鎖は一人の奴隷が持ち支えていたそうです。その後は、別に罪に問われることもなくティヴォリの別荘を与えられて、優雅に暮らしたらしい。「こうしてシリアの女王はいつとはなしにローマの刀自(とうじ、老貴婦人のこと)となり済まし、その娘らは貴族に嫁し、この一族の血統は第五世紀までは断えなかった。」と、ギボンにはあります。 ところで、ゼノビアがどうして大ローマ帝国に対抗しようなんて大それた望みを抱いたのか、と云うことなんですが、彼女の思想的背景には、一人の哲学者がいたのです。カッシウス・ロンギヌスです。あっ、カエサル暗殺で名高いガイウス・カッシウス・ロンギヌスとは別人です。またロンギヌスというと、あの聖槍(キリストの脇腹を刺したとされる槍)のことを思い出す方もおられると思いますが、これも無関係です。(笑)はぁ、あれは槍を刺したローマ兵の名が、伝承ではロンギヌスとされており、それでロンギヌスの槍と呼ばれるのでした。 昔、新プラトン派の本(「世界の名著」第15巻)を見ていた(読んでいたではありません-笑)時に、ポルピュリオスという哲学者が出てきました。プロティノスの生涯を書いた人なんですけど、このポルピュリオスが実は、ロンギヌスの弟子だったのです。「その時代にロンギノスは、一種の生きた図書館で、歩いている学芸館(ムウセイオン、研究所)であった。」大変な人だったようですなぁ。 プロティノスはロンギノスを評して、「ロンギノスはフィロロゴス(愛言者、学者)だが、フィロソフォス(愛知者、哲学者)ではない」と云ったそうですが、まあとにかく、ゼノビアにホメロスとプラトンを説き、よく政治を補佐したわけです。ゼノビアは才色兼備で学識は豊か、ラテン語、ギリシャ語、シリア語そしてエジプト語に通じていたという。 だが、最後にはゼノビアはローマに屈し、彼女自身は許されたのですが、ロンギヌスは他の無辜な人たちと共に処刑されました。ここはひとつ、ギボンの名文を聞きましょう。「天才と学問とは、獰猛(どうもう)で無学な一武弁(ぶべん武士、アウレリアヌス帝のことでしょう-笑)を感動せしめることができなかったが、しかしロンギヌスの心霊をして超然平静を保たしめる役には立った。一言の愚痴ももらさないで彼は、不幸な女主人(ゼノビア)を憐れみ、哀傷する友らに慰めを與(あたえ)ながら、従容(しょうよう)として死の刑についた。」 う~ん、流石は古典プラトン派の哲学者であります。碩学ロンギヌスの著作は一つも残されておりません。わずかにポルピュリオスの著述に、その断片が残るのみであります。(なお、ロンギヌス、ロンギノスとも英語なら同じLonginusで、日本語表記の揺れです) 記事冒頭の画像は、ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロの筆になる「部下の兵士たちに指示を与える女王ゼノビア」(1725-1730年)です。
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by mitch_hagane
| 2019-02-26 20:49
| 5.本
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2019年 02月 25日
この間の記事に、ちょいと書いたように、「ダストの書」第2巻「秘密の連邦」では、レヴァント地方が舞台のようなんですが、その「レヴァント」で思い出したのが、「ライラのオックスフォードLyra's Oxford」(2003年)という小冊子なんです。これは邦訳されていないので何なんですが、「黄金の羅針盤」3部作が完結したあとに出た、はなはだマニアックな内容の掌編です。 いくつかの過去記事のネタにしたことがあります。これとか。あと表紙はこれですね。この「ライラのオックスフォード」には、一杯おまけが付いているのですが、それが何のためなんだか、未だによく分からない(笑)ものがあります。たとえば、本記事冒頭の画像をご覧下さい。これも、「ライラのオックスフォード」に添付されている「おまけ」(の一部)なんです。 上の画像の左側は、絵葉書ですが、これはメアリー・マローン博士が友人のアンジェラ・ゴーマンに宛てたものです。アンジェラは、これ以外の作品では言及されません。内容は大したことなくて、マローン博士がオックスフォードに落ち着いた時の、挨拶状みたいな感じです。博士はもともとは修道女でした。それでこの絵葉書のなかでも、「もうシスターでないのは、不思議な感じです...」と書いています。 問題は右側の画像です。これはゼノビア号という客船のクルーズ案内パンフレットなんです。ゼノビア号なんて、それまでの作品中に出てきたことないです。そして、その船旅の行き先なんですが、なんと!「レヴァント」です!!! (ちなみに、ゼノビアとは、ローマ帝国と勇敢に戦ったパルミラ王国の女王の名です。「戦士の女王」といわれ、クレオパトラの後継を自称したという-「彼女はマケドニア系のエジプト王家の血統に属すると自ら称し、美においては祖先クレオパトラに拮抗し、...女性の中で最も愛らしく、そして最も英傑的であると見られた」ギボン「ローマ帝国衰亡史」第11章) 下の画像は、このパンフレットの続きなんですが、船旅のコマーシャルがあり、全36日の航海でロンドンから中東を回ってサザンプトンに戻ってくるようですねぇ。そして、パンフレットには、何やら手書きの書き込みがあります。スミルナSmyrnaに寄港した時に、カフェ・アンタリヤとか云うところで待ち合わせの予定が。(謎)スミルナっていうのは古名で、いまのトルコのイズミルİzmir市です。スミルナはギリシャ時代には繁栄していました。あのホメロスもここを住処にしていたとか云う話です。 さてさて、それでなんでこんな船旅パンフレットが、「ライラのオックスフォード」に添付されているのか、(物語には全く関係しないのです-汗)、作者自身の説明を聞いてみましょう。「ライラのオックスフォード」の緒言からです。 「この本には物語が一つと、他のものがいくつか含まれています。その他のものは物語に関係があるのかもしれませんし、関係ないかもしれません。それらはたぶんまだ起きていない物語に関係があるのでしょう。その辺りを語るのは難しいのです。...」 2003年の「ライラのオックスフォード」で、すでに「ダストの書」第2巻「秘密の連邦」は予見されていたんですねぇ。あーっ、早く出版されないかなぁ、と云うところで、今回もおしまいです。(笑)
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by mitch_hagane
| 2019-02-25 20:06
| 5.本
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