参考にしたページはここです。
まずは原作から行きます。横浜市立図書館では電子書籍も閲覧可能になっており、鬼平犯科帳も入っています。『鬼平犯科帳5(文春ウェブ文庫)』というものです。即座にブラウザーで読めるのはいいですね。
問題のシーンは、長谷川平蔵がお忍びで、神田豊島町一丁目の柳原土手にある小さな居酒屋「芋酒・加賀や」を訪れるところです。ここは今の地図でいうなら、秋葉原かいわいですね。秋葉原は神田川沿い、あの万世橋が掛かっている川です。川に並行して今は柳原通りが走っています。まぁこのあたりのことでしょう。また、長谷川平蔵の屋敷は本所吾妻橋かいわい、東京スカイツリーが建っている近くです。秋葉原までは4kmくらいですから、十分歩いていけるところです。
さて、この居酒屋の主人は鷺原(さぎはら)の九平(くへい)、実は老盗賊です。この店で出す芋酒(いもざけ)と芋膾(いもなます)の評判がよく、それで平蔵も訪れたらしい。機嫌よく飲んで、食べていますと、柳原土手を縄張りにしている、夜鷹のおもんが現われます。『おさだまりの縞もめんの着物に深川髷(まげ)。茣蓙(ござ)を片手に抱えた姿』とあります。これは典型的な夜鷹の出で立ち、夜鷹は云うまでもなく下等の娼婦でして、縞木綿の着物ってのはごく地味なありきたりもの、茣蓙は商売用のマットです。
『頬(ほお)かむりの手ぬぐいをとった顔は、しわかくしの白粉(おしろい)にぬりたくられ、灯の下では、とてもまともに見られたものではない。おもんは、もう四十に近い年齢なのに、客の袖をひいているのである。』
今の感覚ですと40歳なら若いじゃんとかなるのですが、江戸時代は20で年増(としま)、30近くなれば大年増(おおどしま)ですからね。40ともなれば、もう婆さんです。
さてそれで、平蔵は、『おれも年齢(とし)でな。そっちのほうは、もういけねえのさ』なんて云いながら、夜鷹をちゃんと人間扱いして、酒をおごり、お金も恵みます。半刻(1時間)ほど居酒屋で過ごしたあと、平蔵は店を出るのですが、刺客に襲われ、これを斬り伏せます。
はい、これが問題のシーンなわけです。それで映像化の方ですが、パスぺえさんのおすすめは、長谷川平蔵役を中村吉右衛門が演じたもの、これには2つの版があります。
一つは第1シリーズ第9話で、九平役を米倉斉加年(よねくらまさかね)、夜鷹おもん役を前川恵美子、が演じたもの。1989年9月13日放送、これをオリジナル版と呼びましょう。
もう一つはスペシャル版というリメイクでして、九平役を小林稔侍(ねんじ)、夜鷹おもん役を若村麻由美、が演じたもの。2006年2月17日放送です。
この2つの居酒屋シーンを比較すると、オリジナル版は4分程度なのに対して、スペシャル版は6分強あります。原作では夜鷹と1時間ほど会話をするはずなので、スペシャル版の方が原作に近いです。オリジナル版では、平蔵はすぐに居酒屋を出てしまいます。夜鷹おもん役は、若村麻由美が美女なので映えます、どう見たって夜鷹って雰囲気じゃないです、衣装だって派手ですしね。前川恵美子は原作に忠実に地味な縞木綿の着物を着ています。九平役は、好みにも依りますが、みっちは米倉斉加年の独特のセリフ回しがちょっと気になるので、小林稔侍の方を採ります。すると、…パスピエさんと同じくスペシャル版がよい!ということになりました。(笑)
DVDで視聴が原則ですが、
ここで一応オリジナル版が見られます。
スペシャル版はニコニコ動画なので字幕がうるさいけれど、居酒屋シーンだけは
ここで見られます。