はい、「シャーロック・ホームズの建築」株式会社エクスナレッジ刊(2022年)北原 尚彦 (著), 村山 隆司 (イラスト)です。
「マスグレイブヴ家の儀式」については、日本語では青空文庫ですぐ読めますし、ウィキペディアにもちゃんと
項目があります。英文のテキストもまぁ、そんじょそこらにあります。ということで、その詳細は省略して、いきなり本題に入ります。(笑)
問題点は儀式書に書かれた「歩測」の解釈です。
まず原文はこう。
‘North by ten and by ten, east by five and by five, south by two and by two, west by one and by one, and so under.’
日本語ではこう。
『北へ10歩、そして10歩、東へ5歩、そして5歩、南へ2歩、そして2歩、西へ1歩、そして1歩、そして下へ』
楡(にれ)の木の先端が落とした影の位置から、この歩測をたどって、宝のありかを探すのです。
シャーロック・ホームズはこう語ります。
原文ではこう。
“From this starting-point I proceeded to step,having first taken the cardinal points by my pocket-compass. Ten steps with each foot took me along parallel with the wall of the house, and again I marked my spot with a peg. Then I carefully paced off five to the east and two to the south. It brought me to the very threshold of the old door. Two steps to the west meant now that I was to go two paces down the stone-flagged passage, and this was the place indicated by the Ritual."
日本語ではこう。
「この出発点から僕は歩き始めた、携帯用磁石で方位を抑えておいてね。10歩ずつの歩みは家の壁に並行するのだった、そしてまた僕はペグで印をつけたさ。それから僕は注意深く東に5歩と南に2歩進んだ。すると古いドアの敷居のところに来た。西に2歩ということは石が敷かれた通路を進むということだ、そうここが儀式書の示す場所なのだ。」(「東に5歩と南に2歩は」は、本当は10歩と4歩です)
そして同書pp.172にはこんな解説の絵が載っています。
みっちはこれはおかしいと思います。
上の文章を素直に読むと、起点から20歩、10歩、4歩、すると建物入り口のドアの敷居のところにたどり着くはずなんです。ところが、pp.172の絵を見るとそうではなく、20歩歩く途中で一度ドアの前を通り過ぎ、また遠回りして戻ってくるという、謎のルートです。しかもですよ、「20歩、10歩、4歩」歩いたところで、ぜんぜんドアの敷居のところには居ません。そこから10歩離れたところに居ます。(笑)そして2歩近づくのですが、まだ8歩も離れています。それで石畳の通路passageは屋外である、というとんでも解釈になってしまうのです。まぁ、問題の地下室が建物の外にあっても、ありえなくはないですが、普通の考えでは建物内でしょう。
みっちの解釈図はこうです。
はい、ずっとすっきりしています。なにか違うね。北へ20歩、東へ10歩、「北へ」4歩、西へ2歩、となっています。本文と違うやないか、これはですね、ワトソン博士が書き間違えたんですよ。(笑)彼はそこつなのでよくやるんです。
とにかく、こういう具合に、起点から20歩、10歩、4歩、進んでドアの敷居のところにたどり着くのでないと、理屈が通らないです。こうやって解釈すると、まったく矛盾なく読むことができます。もちろん、石畳の通路passageは屋内になります。
今日はこんなところでした。