なぜルービンシュタインは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタから、たった7曲だけしか録音しなかったのでしょうか、の巻。 |
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2022年 05月 15日
しかし、ルービンシュタインは生涯で、ベートーヴェンのピアノ・ソナタはこの7曲しか録音していません。()内の数字は録音回数です。 第3番ハ長調Op.2-3(1回) 第8番 ハ短調 Op.13『悲愴』(3回) 第14番嬰ハ短調 Op.27-2 『月光』(1回) 第18番 Op.31-3 変ホ長調(3回) 第21番 ハ長調 Op.53『ヴァルトシュタイン』(1回) 第23番ヘ短調 Op.57『熱情(アパショナータ)』(4回) 第26番 変ホ長調 Op.81a 『告別』(2回) いずれも、ベートーヴェンの初期・中期の作品で、後期の作品は含まれません。最も新しい『告別』でも、1809-1810年の作曲です。前にも述べたとおり、ベートーヴェンのピアノ協奏曲は全曲を3回も録音していますが、考えてみれば、ベートーヴェンのピアノ協奏曲も、すべて中期までの作品なのです。(最後の第5番『皇帝』が1810年出版)してみると、ルービンシュタインはベートーヴェンの後期の作品は、ことさら避けたように思われます。 ルービンシュタインは、本質的に洒脱な人である、と思います。眉間にシワを寄せての苦衷の表情なんていうのは、彼からもっとも遠いものでしょう。若い頃は奔放に弾いていたが、結婚を期に真面目に譜面を読み、テクニックを磨いたと本人は云っていますが、本質的なボヘミアンな性格は変わらない、結婚してからはアメリカからパリへ戻り、その生活ぶりといえば、朝寝、2時間ほどのピアノ練習、フーケのカフェでアペリティフを嗜み、シャンゼリゼ通りでカフェ・コンサートなどを愉しみ、夜はマキシムで食事、とこんな具合です。それは生活の一面を示すのみかもしれませんが、やはりベートーヴェンの後期ソナタの深み・深刻さとは、遠いところにあったと思えます。 バレンボイムはルービンシュタインの特に秀でた特質を2つ挙げています。それは「リズム感sense of rhythm」と「他人にはない濃厚な響きunique, full-bodied sound」であると。みっちがルービンシュタインの録音を聴いて、感じるのはその美音ぶりです、それこそがルービンシュタインの本質であり、それを活かす方向の作品に彼の関心は向いた、と思っています。 さてさて、前置きが長くなりました。今日は「The Rubinstein Collection」のVol.56、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ集です。曲目は『悲愴』『月光』『熱情』『告別』の4曲、録音年は1962-1963年、記事冒頭の画像はジャケットの写真ですが、この写真から受ける印象と、演奏を聴いた印象は、きわめてよく一致いたします。スタインウェイから導かれる、その独特の美音ぶり、時の経つのを忘れるとはこのことでありましょうか。 ルービンシュタインはたしかにベートーヴェンの魅力の全てを伝える人ではない、だが残されている演奏記録は、ルービンシュタインの得意の庭では、いかに黄金の果実を収穫できるかを、如実に示しています。 今回の記事は、「The Rubinstein Collection」の各Volのライナーノートと、以下のTim Pageの記事(2000年)を参考にしています。
by mitch_hagane
| 2022-05-15 17:12
| 3.音楽
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