NHKプレミアムシアターで今年のバイロイト「ローエングリン」公演を観たのですが、ちょっとこれは頂けないなぁ(汗)、しかし、その埋め草の放送がなかなか...、の巻 |
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2018年 08月 31日
はぁ、NHK BSの8月27日(月)午前0時00分~ 午前4時35分に、表題に書きましたような「ローエングリン」公演放映がありました。「ローエングリン」って、どうも演出がねぇ、というオペラではあります。これはワーグナーご本尊がいけないのですが、どうも筋書きに納得性が乏しいのです。そのためかどうか、無理矢理解釈したような怪しげな演出がまかり通るという状況になっております。たしかに、白鳥の騎士が銀色の鎧に身を固めて、薄幸のお姫様を救いに来るなんて話を、今さら大真面目にはやりにくいです。(笑) で、今回、ローエングリン役は、日本の会社でもよく見かける、電気工事会社のオッサンみたいな作業服上下(笑)を着て登場します。そして、エルザ姫との初夜のベッドでは、何が気に入らないのか、エルザをロープで縛ったりいたします。(驚) なんでも、今回の演出のテーマは、「ローエングリンの偽善性を暴く」ということらしく、エルザがオルトルートの忠告を聞いて、彼の出自を問うたのは実は正解であった、ということになるとか。まぁ、この演出のことは、これ位にいたしましょう。 あっ、記事冒頭の画像は、この「ローエングリン」の第2幕です。電気工事士くんは、結婚式に備えて、一張羅を着ております。 面白かったのは「ローエングリン」放送後の埋め草の方で、今回の公演でオルトルート役を歌ったワルトラウト・マイヤー(Wikipediaの表記ではヴァルトラウト・マイアー)さんの特集が放映されました。 放送の表題は「ドキュメンタリー伝説のワーグナー歌手ワルトラウト・マイヤ(2017年ドイツ)」となってるんですがね。 じっさいの原題は、Wagner Legend Waltraud Meier "ADIEU Kundry, ADIEU Isolde"なので、「ワーグナー伝説ワルトラウト・マイヤ "さらばクンドリー、さらばイゾルデ"」というところでしょう。SCREEN LAND FILM、RUNDFUNK BERLIN-BRANDENBURG、およびARTEの共同製作、2017年です。 マイアーさんは1956年生まれなので、今年御年62歳、オペラ歌手として立派な年齢です。それで「重い役」はもう歌わないわ、という話なんです。完全引退と云うわけではなさそう。 云うまでもないですが、クンドリー役とイゾルデ役は、ワーグナー・オペラにおける重要な「重い役」です。あと、もう一つ「重い役」として、ブリュンヒルデ役があるのですが、マイアーさんはメゾですから、舞台でブリュンヒルデを歌ったことはないと思います。ですから、 "さらばクンドリー、さらばイゾルデ"なんですね。 ダニエル・バレンボイムの指揮でクンドリーを歌った、ベルリン国立歌劇場(シラー劇場)の2016年3月28日公演がフィーチャーされています。これが最後のクンドリー役の舞台だったようです。 この舞台(再演)のリハーサル・シーンでも、マイアーさんの言葉に、演出助手のトルシュテン・ケレがたじたじとなるところが写っておりました。(笑) 「パルジファル」でのクンドリー役といえば、もちろん第2幕に尽きるわけで、クンドリーは邪悪な魔法使いクリングゾルの手先として、パルジファルを誘惑し、堕落させようとします。何しろ彼女は、十字架上のキリストを笑って嘲ったために、救世主自身から呪詛を受けているのです。その呪いによれば、彼女はいかなる男も誘惑できる魔法の力を持つが、彼女の腕に転がり込んでくるのは、不実な男ばかり。永遠に得られぬ真の愛を求めて、彼女は泣くことも許されず、未来永劫にわたり彷徨う運命なのです。 みっち注:いったいキリストが呪いをかけたりするものなのかね、という疑問をお持ちの方もおられると思いますが、答えはイエスです。(笑)たとえば、マタイ伝21.19に、空腹だったイエスが、道ばたのいちじくの木に近寄り、実がなっていないのを見て、「これからお前はもう二度と実をつけるな!」と呪詛しています。『すると、いちじくの木は、すぐに枯れてしまった。』このくだりは、どう読んでも、ただの例え話とは思えません。 クンドリーは心の底では、自分の邪な魅力に抵抗できる男を求めています。それができる男だけが、彼女に救済をもたらすのです。果たしてパルジファルは、その探し求める男なのか、彼女にも確信はない、しかし怖いものを見るように、彼を誘惑し、快楽に誘い、行き着くところを見てみたいという衝動に駆られるのです。 こういうところは、「パルジファル」を音だけで(昔はレコード、その後CD)聴いていた時には、なかなか掴みにくかったところです。 みっちが初めて「パルジファル」の舞台を観たのは、1989年のウィーン国立歌劇場公演でした。パルジファル役はルネ・コロ、クンドリー役はエヴァ・ランドヴァ、まあなんの不足もないキャストだったと思いますが、まだまだ理解にはほど遠い状態でありました。 それが、多少分かってきたのは、レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場の「パルジファル」公演DVDを観てからでしょうか。1992年の公演で、クンドリー役をマイアーさんが演じておりました。初めてマイヤーさんの舞台を観た印象は、まさに「コペルニクス的転回」でありました。やはり、音楽と歌唱だけで伝えられるものには限界があります。演技と「見かけ」がオペラでは欠かせません。 パルジファルは、アムフォルタス王の味わった魔の快楽とその結果としての苦悩を共感することで、クンドリーの誘惑を打ち破ります。(「去れ、不浄の女よ!」) 自らの魔力に抵抗できる男を求めていたはずですが、いざそうなってみると、クンドリーは動転します。大いに自尊心を傷つけられたクンドリーは、パルジファルを呪い、「迷い道」の呪詛をかけるのです。 パルジファルはクリングゾルから奪い返した聖槍をかざし、虚飾に満ちた魔法の花園は崩れ落ち、瓦礫の山に変わります。ここに至って、クンドリーは、パルジファルによる自己の救済を、ついに認識することになります。続く第3幕では、彼女は「贖罪の女」として登場し、奉仕と懺悔と涙によって、望んでいた救済を受け、事切れるのです。 "さらばクンドリー、さらばイゾルデ"は、いままで知らなかったことも、多く盛り込まれ、とても愉しかったです。マイアーさんが、舞台でボンボン(飴です)が欠かせない、というのも初めて知ったし。(笑) また、彼女が演出家のパトリス・シェローを高く評価していたのが分かって、そうだろうな、と思いました。彼の演出による、スカラ座の「トリスタンとイゾルデ」(2007年)は素晴らしかったです。もちろん、マイアーさんはイゾルデ役を歌いました。(過去記事あります) ドキュメンタリーも、このイゾルデの最後の絶唱で終わります。"さらばクンドリー、さらばイゾルデ"、いやぁマイアーさんのこの2つの役は、ほんとうに他に代え難い贈り物でありました。その最良の時を体験できたのは、この上ない幸せです。
by mitch_hagane
| 2018-08-31 09:13
| 3.音楽
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