さあ、それではどんどん参りますよ。
1.ドン・ジョヴァンニ:
これは
過去記事で、ジャケット写真やデータを載せてますので、そちらを。
Deccaの素晴らしい記録の一つです。チェーザレ・シエピの美声を堪能できます。このクリップス盤で、十分音は良いのですが、もっと最新盤が良いという向きは、ネゼ=セガンをお薦めします。
2.魔笛:
これも詳細は
過去記事に書いたので省略といきましょう。
3.コジ・ファン・トゥッテ:
みっちが「コジ・ファン・トゥッテ」を初めて見たのはレーザーディスクで、ジョージ・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツ盤でした。これは衝撃でしたね。「コジ・ファン・トゥッテ」って、こんなにも洒落てて、面白いものかと思いました。リブレットだけ読んだ第一印象は、さっぱり良さが感じられなかったのですが。
それ以来の、「コジ・ファン・トゥッテ」ファンであります。
ガーディナーのコジが新しいとすると、オーソドックスの代表としてカール・ベームの2つの定番があります。フィオルディリージ役をエリーザベト・シュヴァルツコップが歌ったEMI盤と、リーザ・デラ・カーザが歌ったDecca盤です。メゾソプラノのドラベッラ役は、どちらの盤もクリスタ・ルートヴィヒが歌っています。
このベームの2つの盤はどちらも傑作ですねぇ。どちらを聴いても、愉しいです。
だが、しかし、みっちがここで選ぶのはヤニック・ネゼ=セガンです。彼の指揮したドン・ジョヴァンニは本当に素敵でした。そして、このコジも凄いのです。
フィオルディリージ役はスウェーデンのMiah Persson、ドラベッラ役はアメリカのAngela Browerが歌っています。
4-7.交響曲集:スウィトナーとシュターツカペレ・ドレスデンの黄金時代の演奏です。もちろん、録音場所はドレスデンの聖ルカ教会、この音、この演奏で、本当にもう十分なのではないでしょうか。(愉)
8-17.ピアノ協奏曲とソナタへ行く前に、ヴァイオリン・ソナタから片付けましょう。
18-20.ヴァイオリン・ソナタ集:
始めはグリュミオーとハスキルの定番を選ぼうと思っていたのですが、たまたまヒラリー・ハーンとナタリー・シュウの盤を聴いたら、断然音が違う。まあ、ピアノはともかく、ヴァイオリンの音の方が。(汗)
これを聴いてしまうと、もうとてもグリュミオーには戻れません。
ということで、ハスキルさんには、「ふっ、やっぱり若い子の方がいいのね」とか嗤われそうですが、みっちはヒラリー・ハーンの盤の方を採らせていただきます。(笑)
では、8-17.ピアノ協奏曲のピアニスト選択について
じつは最初、ピアノ協奏曲集はクララ・ハスキル(1895-1960)とロベール・カサドシュ(1899-1972)の2人だけでいいかな、と考えていたのです。この2人で十分に満足できるライブラリが作れるのは確かですし。
ですが、実際にお薦め盤を選び始めると、そうはいきませんでした。次々と採りあげたい盤が続出するのです。
まずはクララ・ハスキル(1895-1960)からいきましょう。
これはもうあまり多くを語る必要はないでしょう。第13番、第20番、第24番を採ります。特に第13番はみっちの大のお気に入りの曲、たまりません。
また、第20番、第24番は数ある録音の中から、唯一のステレオ盤を採りましょう。マルケヴィッチの指揮・サポートは流石です。
この録音は彼女が亡くなる1ヶ月前の録音ですね。
アンネローゼ・シュミット(1936-)
彼女はクルト・マズア/ドレスデン・フィルでモーツァルトのピアノ協奏曲全集がありますが、みっちはこれは全然採りません。
ここは第21番で、スウィトナー指揮シュターツカペレ・ドレスデンの美音にしびれましょう。ところがですね、なぜか映画「Elvira Madigan」(邦題「短くも美しく燃え」)に使われた第2楽章の音が良くないのです。(汗)
参りましたね、アンネローゼのピアノは悪くないのですが。この第2楽章が目当てだと、ちょっといくらなんでも、この盤は採れないなぁ。(汗)
仕方がない、第21番は「世界のウチダ」内田光子(1948-)さんのジェフリー・テイト/イギリス室内管の盤に変更いたします。
この内田/テイト盤は、第2楽章の美しさでは出色だと思います。
「ハンガリーの伝説」アニー・フィッシャー(1914-1995)は録音に恵まれていません。
やむを得ず、彼女の晩年の録音である、N響との第22番を採ります。
第22番はちょっと意外感のあるハ短調の第2楽章を挟んで、軽快な第3楽章に入る、みっちの好きな曲です。一般的な人気は今ひとつというところみたいですが。実際、アニーに相応しい曲だと思うのです。
ただ、この録音は、彼女のキャリアの晩年であるため、少し苦しい所があるかもしれませんが、彼女独特の迫力を垣間見ることができます。
マルタ・アルゲリッチ(1941-)
マルタならではの演奏だと思います。また、アバドの指揮も素敵です。
さあて、リリー・クラウス(1903-1986)、彼女はひまわりのように常に太陽の方を向く、人生に肯定的な人だと感じます。一言で言えば、明るい。
クララ・ハスキルとは、ライバル視されていたようですが、全くその性格は逆であったように思います。
リリーはクララのモーツァルトを聴いて、「素敵だけど、炎が足りないわ」と漏らしたそうですが、もしクララに同じ事を聞いたら、きっと「素敵だけど、陰影が足りないわね」と返したことでしょう。(笑)
そして、リリーについては、日本との関わりについて、どうしても触れておかねばならぬことがあります。彼女は太平洋戦争勃発時に、たまたまヨーロッパから逃れて、ジャワにいました。日本軍の侵攻により、ジャワは占領され、リリーは家族ともども収容所に入れられ、強制労働に従事させられました。
この事実は、日本人として、恥ずかしく情けないのですが、歴史的事実として、記憶にとどめねばなりません。救いは、戦後リリーが日本人を赦し、何度も来日して、リサイタルを成功させたことです。
ちなみにリリーは、日本人は赦したが、ドイツ人に対しては、遂に終生心から赦すことはありませんでした。
話がだいぶん逸れてしまいました。(汗)
リリーでは、華麗でポピュラーな第19番と第26番を採ります。古い録音で、指揮者はなんちゃってお兄さんだし、オケも頼りないことおびただしい。しかし、しかし、リリーのピアノは、あくまでも正々堂々、天下の大道を行きます。流石です。
今回の記事冒頭の画像は、リリーの1946年の写真です。すでに収容所での辛苦は克服されているようです。美しい姿だと思います。
(みっち注:リリーに関する情報は、「Lili Kraus: Hungarian Pianist, Texas Teacher, Personality Estraordinaire」Steven Henry Roberson著Texas Christian Univ. Press刊2000年4月版に依っています。この本のことは、いずれまた採りあげようと思っています)
こうしていくつかの協奏曲を女流ピアニストに割り振った後、残った(笑)曲は、すべてロベール・カサドシュとセルの手腕にお任せします。
このペアの仕事は本当に素晴らしいです。
21-24.ピアノ・ソナタ集:
ピアノ・ソナタはリリー・クラウスで良いと思っていたのですが、つくづく考えてみると、第14番ハ短調のK457はリリーじゃない方が相応しいかと感じました。
また、第15番ヘ長調K533/494については、リリーは弾いていないようなので、これはどのみち別のピアニストを探さねばなりません。
そこで、マリア・ジョアン・ピレシュ(1944-)です。
彼女の第14番第15番は素敵です。彼女もまた、炎ではないモーツァルトです。
そして、第17番第18番をリリーに弾いてもらって完、とこうなりました。
今回は以上です。
参考)
簡単なモーツァルトの年譜です。やはりウィーン住まいとなってからの作品が重要です。K(ケッヘル番号)で大体の作曲年代が想像できます。
1756年ザルツブルクに生まれる
1777年ザルツブルクでの職を辞しミュンヘン、マンハイムへ移る
1778年パリへ移る
1779年ザルツブルクに帰郷
1780年オペラ『イドメネオ』K.366準備のためにミュンヘンに赴く
1781年ザルツブルク大司教コロレドと衝突して解雇される。ウィーンへ
1786年オペラ『フィガロの結婚』K.492初演
1787年オペラ『ドン・ジョヴァンニ』K.527初演
1788年「3大交響曲」を作曲
1790年オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』K.588初演
1791年オペラ『魔笛』K.620初演。12月5日ウィーンにて死去