それじゃあ、みっちが良しとする「魔笛」はどんなんだい、言ってみな(汗)、てなわけで、今日は「魔笛」聴き比べです。(笑)
まず「魔笛」の録音は掃いて捨てるほどあるので、みっち独自の観点から、特色ある4種の盤を揃えてみました。
録音年代順に並べてみましょう。
①カラヤン、ウィーン・フィル、EMI盤(モノーラル録音、セリフなし)1950年11月WienのBrahmssaalにて収録
②フリッチャイ、RIAS響、グラマフォン盤(モノーラル録音、セリフあり、ただし主要人物は歌手とは別の役者)1954年6月BerlinのJesus-Christus-Kircheで収録
③クレンペラー、フィルハーモニア、EMI盤(ステレオ録音、セリフなし)1964年3月9月LondonのKingsway Hallにて収録
④アバド、マーラ室内、グラマフォン盤(ステレオ録音、セリフあり)2005年9月ModenaのTeatro Comunaleでライブ収録
以下カラヤン、フリッチャイ、クレンペラー、アバドと略して書きます。
実は①カラヤンと③クレンペラーは過去記事ですでに扱ったことがあります。ジャケット画像や配役表も付いていますので、ご参照ください。
で、比較ポイントは、序曲と夜の女王の復讐のアリアDer Hölle Rache Kocht In Meinem Herze...です。何だそれだけか、と言われそう。(汗)はい、「魔笛」はほとんど全編が聴きどころであり、それぞれの個所で侃々諤々の議論が多いわけですが、全部語っていては、とうてい紙数(何の紙数?-レトリックですよ。笑)が足りません。
そこで、この2つのポイントに絞ります。しかし、短いですが、その情報量たるや大したものです。
例えば、「魔笛」序曲ですが、極端な話、冒頭のあの有名な3つの和音がなっただけで、そのオペラ全体の出来栄えがだいたい伺えるというものです。恐ろしいです。みっちはワルシャワ室内オペラの冒頭3和音がなったときに、「ははぁ」と思いましたもの。
第2幕の「復讐のアリア」コロラトゥーラ・ソプラノの力量を測るのに、これほど相応しいものはないでしょう。ワルシャワを聴いた時に、これはないんじゃないか、と感想を抱いた部分です。(汗)
まず簡単に各盤のおさらいを。
①カラヤン
カラヤン初期の傑作です。1980年のベルリン・フィル盤より圧倒的に良いと思います。キャスト全体が優れています。夜の女王はヴィルマ・リップWilma Lippです。
これに比べれば、1980年盤のカーリン・オットなど、なんちゃって夜の女王です。(笑)
②フリッチャイ

これはLP初期の定番です。極めて正統的演奏とされ、キャストも充実しています。まあ、みっちはパパゲーノのフィッシャー=ディースカウは好きではありませんが。
夜の女王はリタ・シュトライヒで、素晴らしい出来です。
③クレンペラー
名プロデューサー、ウォルター・レッグが失脚する直接のきっかけとなった盤ですね。この録音は、女声陣がもの凄く豪華です。グンドゥラ・ヤノヴィッツGundula Janowitzがパミーナ、エリーザベト・シュヴァルツコップElisabeth Schwarzkopfとクリスタ・ルートヴィヒChrista Ludwigが侍女を歌っています。このそうそうたる顔ぶれでは、レッグの後を引き受けたピーター・アンドリーはさぞかし苦労したことでしょう。夜の女王はルチア・ポップLucia Poppです。
④アバド
なんとアバド唯一の「魔笛」、オケも歌手もベテランではなく、新鮮です。夜の女王はエリカ・ミクローシャさん、みっちは彼女の「夜の女王」実演を聴いています。(愉)
まあ、何と言いましょうか、50年代60年代の名盤3種に、アバドの新盤1種を足した、という感じです。
さあ、それで評価は如何に。(笑)
この比較試聴は実は失敗でした。どの盤も素敵で、試聴するとそのまま聴き入ってしまうことが多く、比較が進まない。いや本当に。(笑)
まあ冷静に判断しやすいのは、録音です。
①モノーラル録音ですが、ヴィヴィッドな音で録れています。優れています。
②モノーラル録音ですが、まあ聴きやすい録音ではないかと思います。十分楽しめるレベルです。
③ステレオ録音ですから、やはりそれなりに良いです。愉しめます。ただ、この年代なら、もう少し良くてもいいのではという気がします。EMIでなく、Deccaだったらどうか、などと考えてしまいます。
④もちろんステレオ録音、音は文句なしです。
まとめ:
なんといってもアバドです。正直これを聴いてしまうと、その清新さに、他は色あせます。もちろんライブ収録(編集はされていると思います)ですから、他のセッション録音のものと聴き比べれば、荒いのですが、その志に溢れた新鮮な取り組みは見事の一言につきます。まさに現代の「魔笛」だと思います。
アバド>カラヤン>クレンペラー>フリッチャイの順とします。
夜の女王のアリアでは、エリカ・ミクローシャ素敵です。リタ・シュトライヒと同等、いや少し上回るといってよいでしょう。
ルチア・ポップ、以前に聴いた時は、もう少し良かった記憶があるのですが、今回は残念ながら、比べたライバルたちが凄すぎます。
ヴィルマ・リップ、みっちはとても素晴らしいと思います。
エリカ・ミクローシャ>=リタ・シュトライヒ>ヴィルマ・リップ>ルチア・ポップの順といたします。
みっちはミクローシャの「夜の女王」実演を聴いておりますが、まさにこの録音どおりの印象的な歌唱でした。過去記事は
ここです。
付録:
②フリッチャイ配役表
夜の女王:リタ・シュトライヒRita Streich
ザラストロ:ヨゼフ・グラインドルJosef Greindl
タミーノ:エルンスト・ヘフリガーErnst Haeflinger
パミーナ:マリア・シュターダーMaria Stader
パパゲーナ:リザ・オットーLisa Otto
侍女1:マリアンネ・シェッヒMarianne Schech
侍女2:リゼロッテ・ロッシュLiselotte Losch
侍女3:マルガレーテ・クローゼMargarete Klose
モノスタトス:マーティン・ヴァンティンMartin Vantin
パパゲーノ:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウDietrich Fischer-Dieskau
④アバド配役表
夜の女王:エリカ・ミクローシャErika Miklósa
ザラストロ:ルネ・パーペRené Pape
タミーノ:クリストフ・シュトレールChristoph Strehl
パミーナ:ドロテア・レシュマンDorothea Röschmann
パパゲーノ:ハンノ・ミュラー=ブラッハマンHanno Müller-Brachmann
パパゲーナ:ユリア・クライターJulia Kleiter
侍女1:カロリーネ・シュタインCaroline Stein
侍女2:ハイディ・ツェーンダーHeidi Zehnder
侍女3:アンネ=カロリーネ・シュリュターAnne-Carolyn Schlüter
弁者:ゲオルク・ツェッペンフェルトGeorg Zeppenfeld
モノスタトス:クルト・アーツェスベルガーKurt Azesberger
僧侶1:アンドレアス・バウアーAlexander Lischke
僧侶2:ダニロ・フォルマッジャDanilo Formaggia
僧侶3:トビアス・バイアーTobias Beyer