なぜ、カラヤンはバイロイトを去ったか-ヴォルフガング・ワーグナー回想録第2回 |
(コメントに重複があったようなので、片方を削除させて頂きました)
はい、このあたり、一番面白いところですよね。(嬉)
次は、カラヤンとクナのエピソード続きと、バイロイトのピット内楽器配置のことを採り上げたいと思います。
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
検索
タグ
オーディオ(128)
オペラ音盤(86) 公演見聞記(71) テニス(56) フィリップ・プルマン(43) 児童文学(38) ワーグナー考察(35) 室内楽(30) D810(27) D800E(23) FMエアチェック(21) 東レ・パンパシフィック(21) ヴァルトラウト・マイアー(20) α6000(20) α7RIII(20) アバド(20) フリードリッヒ・グルダ(19) ベートーヴェン(18) 持ち物(18) シュターツカペレ・ドレスデン(18) カタリーナ・リゲンツァ(17) リヒアルト・シュトラウス(16) パルジファル(16) ファウンデーション(15) マルタ・メードル(14) エレーヌ・グリモー(13) カラヤン(13) iPhone 12 Pro Max(12) パンケーキ(12) ドン・ジョヴァンニ(12) モーツァルト(12) ジャック・リーチャー(12) 五味康祐(11) リー・チャイルド(11) 名曲100選(11) トリスタンとイゾルデ(11) 黒田恭一(11) クナッパーツブッシュ(10) アストリッド・ヴァルナイ(10) iTunes(10) Fire HD 8(10) ワルキューレ(9) グレコ・ローマン古典(9) ダン・ブラウン(9) MacBook(9) タンホイザー(8) ジョン・カルショウ(8) 翻訳(8) クリスティアン・ティーレマン(8) ピアノ・トリオ(8) 新国立劇場(8) iPad Pro 12.9 第5世代(8) ピーター・アンドリー(8) ハリー・クプファー(8) マルティン・ハイデッガー(8) 魔笛(7) ハンス・ホッター(7) 妖精の女王(7) 大地の歌(7) 録音スタジオの内側(7) 影のない女(7) デルファイ(7) So war mein Weg(7) 使い方(7) シャーンドル・ヴェーグ(6) ヘキサーRF(6) 夏目漱石(6) グレン・グールド(6) フルトヴェングラー(6) ブルーノ・ワルター(6) ハンナ・アーレント(6) キャサリン・フォスター(6) インフェルノ(6) NLP(6) Audirvana Plus(6) ショーペンハウアー(6) ダン・シモンズ(6) メンデルスゾーン(6) ステファン・ヘアハイムの指環(6) ハイペリオン(6) 橋爪ゆか(6) ジョニ・ミッチェル(6) ヴィーラント・ワーグナー(6) イモージェン・クーパー(6) 55mm F1.2(5) ウイリアム・ブレイク(5) ローエングリン(5) ロバート・ラングドン(5) クリスタ・ルートヴィヒ(5) Fireface UFX(5) 存在と時間(5) マイスタージンガー(5) Magnus Flyte(5) カルロ・マリア・ジュリーニ(5) Python(5) ジェニファー・ローレンス(5) 近所散歩(5) シモーネ・ヤング(4) スター・ウォーズ(4) フリーダ・ライダー(4) 最新の記事
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2013年 11月 22日
その前に、予備知識を少し挙げておこう。先刻承知の方は、すっ飛ばして頂きたい。 1.戦後バイロイト音楽祭が再開されたのは1951年である。この時、こけら落としのベートーヴェン第9交響曲はフルトヴェングラーが指揮し、その録音は名盤として名高い。この年は『指輪』が2サイクル、『パルジファル』が6公演、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』が7公演である。 指輪の指揮は、クナッパーツブッシュ(以下クナと表記)とカラヤン、パルジファルはクナ、マイスタージンガーはクナとカラヤン、である。早い話が、オペラの指揮はクナとカラヤンの2人だけである。 2.翌年1952年のバイロイト音楽祭は、『トリスタンとイゾルデ』5公演(指揮はカラヤン)、指輪が2サイクル(指揮はヨゼフ・カイルベルト)、パルジファルが5公演(指揮はクナ)、マイスタージンガー7公演(指揮はクナ)である。指輪だけはカイルベルトであるが、あとの指揮はクナとカラヤンである。 3.そして1953年の音楽祭には、クナもカラヤンも参加していない。クナは1954年に復帰するが、カラヤンはこの後、二度とバイロイトの指揮台に上がることはないのである。 ブログの過去記事で、アストリッド・ヴァルナイの回想録を扱った時、この話題にふれている。 ヴァルナイは、カラヤンの指揮法に問題があり、そのためラモン・ヴィナイがリハーサルをすっぽかした、と言っているのである。 本件はあまりに信じがたいふしがあり、続いての過去記事、『果たしてカラヤンの棒は空中に謎の円を描いたか?(笑)』では、ヴァルナイの同僚のマルタ・メードルの話を採り上げている。 先ほど挙げた1952年の『トリスタンとイゾルデ』5公演で、メードルは4回イゾルデを歌っている。ヴァルナイは1回だけである。( メードルは、ヴァルナイの発言に対して、微妙な返事をしている。取りように依って、どうとでも取れそうな発言である。曰く、『彼は分からなくなると、円を描くのよ』 メードルはカラヤンとは親しかったようで、特に悪い印象は持っていないように見える。 さてさて、ヴォルフガングは、このあたりをどう語っているのだろうか。 ヴァルナイの回想録と一致していると、確信が持てるのだが... それが、全然話が違うのです。(大汗) カラヤンとラモン・ヴィナイRamon Vinayとの不和として語られている。 理由はカラヤンのリハーサルのやり方である。 カラヤンはステージ・リハーサルを指揮するときも、録音機の助けを借り、それが度を過ごしたものabsurd dimensionとなっていた。 カラヤンは、フレーズを終わるまで待つことなく、2小節目だろうが3小節目だろうが、お構いなく遮るのだ。 ヴィナイはこれに耐えられず、ヴォルフガングたちに、このやり方を止めさせるように頼んできた。ある時、オーケストラ・ステージ・リハーサルの最中に、ヴィナイはカラヤンの存在に耐え切れず、窓から抜けだし、塀を飛び越えて逃走した。(笑) その後ヴィナイとカラヤンの関係修復に多大な努力を要して、どうやらトリスタンをオリジナルの配役で公演できることになるのだ。 この時、ヴォルフガングたちは、カラヤンに録音機を使って歌手のリハーサルを行うのを止めさせたので、カラヤンは内心不興であったと思われる。 カラヤンは1952年の最後のトリスタン公演(8月25日)の後で、1953年に戻ってくると約束した。 まさにその翌日、1952年8月26日、ミュンヘンからメッセージが届き、承認は拒否に変わった。 彼は明らかにこの間に、彼の広報担当で、財務アドバイザーの、ウォルター・レッグと打ち合わせたのである。 そして、クナもバイロイトを去る。 ヴィーラントの新バイロイト形式の演出についていけなくなったからである。 ヴィーラントは、ナポリにおける『リング』公演2回をゲストで演出する。最初が1952年3月、2回めが1953年4月である。ここで、彼が構想していた新バイロイト形式の演出(ミニマル演出)を存分に試してみたのである。 これに反発して、1953年4月13日、クナは2回めのナポリ公演へゲスト出演を終えた直後、ヴィーラントに手紙を書いて、1953年の2回のリングとパルジファルの指揮を辞退してきた。 ヴィーラントは説得を試みたが、1953年5月1日電報が入る。 『親愛なるヴィーラントへ、私は我々の決別を少しでも和らげたいと思っている。つまり、これを当座のものとしたいのだ。どうか、私の取った処置を理解していただきたい。リヒアルト・ワーグナーの精神が祝祭劇場に戻れば、私は最初に駆けつけるであろう。』 まあクナの辞退は、永久の決別を意味しては、いなかったのですね。 電報の調子は、まだ暖かいです。 がしかし、これで1953年バイロイト音楽祭は、1951年と1952年を盛り立てた、クナとカラヤンの2枚看板の指揮者をどちらも失うことになったのです。 さあて、風雲急を告げるバイロイト音楽祭は、いかが相成りましょうや。 ヴィーラントとヴォルフガングの次なる秘策は? この先は、次回のお楽しみであります。(笑) 写真の説明: はいっ、写真はヴァーンフリート荘Villa Wahnfriedのテラスで、議論するヴォルフガング・ワーグナーとヘルベルト・フォン・カラヤン。2人は何やら難しい顔をしています。2人はオーケストラの配置を議論しているんですねぇ。 これは一体いつのこと?1952年7月23日です。あのぉ、この日がバイロイト音楽祭の初日で、しかも『トリスタンとイゾルデ』のプレミエ(初日)なんですけど。(汗) それでオケの配置の打ち合わせ?それは一体...(次回に続きます-笑) ヴァーンフリート荘はリヒアルト・ワーグナーの館です。WahnfriedはWahn幻想・妄想とfried平和を組み合わせた、ワーグナー自身の造語です。"Hier wo mein Wähnen Frieden fand – Wahnfried – sei dieses Haus von mir benannt."『ここに我が妄想は平和を見出した、ヴァーンフリート、我はこの館をかく名付ける。』 1945年4月5日の空襲で2/3は破壊され、その後修復されています。(現在は博物館になっているのですが、当時はワーグナー家で使っていた。)
by mitch_hagane
| 2013-11-22 12:00
| 3.音楽
|
Comments(2)
Commented
by
solarisu_sakura
at 2013-11-24 17:39
x
ラモン・ヴィナイとカラヤンがこれほど折り合いが悪かったとは知りませんでした。クナパーツブッシュは台本どうりの古い演出を好み、ウイーラントのモダンな演出を嫌っていたのは知られていましたが、53年の出演拒否はその演出が理由だったんですね。ぼくはクナッパーツブッシュが嫌っているクレメンス・クラウスの出演が理由だと思っていたんですが、、、。クラウスがあと少し長生きしていたらどうなっていたでしょう?。54年は、ウオルフガンクとクナッパーツブッシュのマリオン夫人や友人達に説得されて機嫌を直し、指揮をOKしたようです。パルシファルの演出で白いハトを飛ばすエピソードはたしかこの年(54年)だったはず。ウオルフガンクの回想録の続き、楽しみにしています。
0
Commented
by
mitch_hagane at 2013-11-24 18:10
solarisさん、いつもコメントありがとうございます。
(コメントに重複があったようなので、片方を削除させて頂きました) はい、このあたり、一番面白いところですよね。(嬉) 次は、カラヤンとクナのエピソード続きと、バイロイトのピット内楽器配置のことを採り上げたいと思います。
|
ファン申請 |
||