カール・ツァイスの基本おさらい |
ちょっと、ここで目先を変えて、カメラ・レンズの話でも。
先日ヘキサーRFを買ったのと同時に、カール・ツァイスの Cビオゴン T* 2.8/35 ZM も手に入れた。ツァイスってぇとですね、すぐに講釈する人が現れますからねぇ。やですねぇ。
対抗して、ちょいと基本を理論武装しておきましょう。(笑)
はじめにお断り。以下の記事はすべて、参考文献
"From the series of articles on lens names: Distagon, Biogon and Hologon" Dr.Hubert H. Nasse (Carl Zeiss AG)
の受け売りです。よって、みっちなんぞの解釈に依らず、直接原典に当たりたい方は、ここへジャンプして下さい。(笑)
まずツァイスの広角レンズ(Distagon、Biogon、Hologon)はすべてgonが付く。ギリシャ語の"gonia"(意味は角度angle)から来ている。
1.レトロフォーカス・レンズ
Distagonの名前の由来はdistanceから来ている。distanceの意味は距離だが、ここではカメラレンズの最後玉表面とイメージ面(フィルム面ですなぁ)との距離のことである。
この距離のことをバック・フォーカル・レンクスback focal lengthと呼んでおります。
レトロフォーカスとは、レンズ群の先頭に凹レンズを持ってきて、バック・フォーカル・レンクスを長く取れるようにしたタイプのレンズである。
古くは1917年にテクニカラー(映画ですよぉ...風と共に去りぬ...スカーレット・オハラ...『結局、明日は別の日なのよね』...笑)が導入された時に、このバック・フォーカル・レンクスの長いレンズが必要となった。テクニカラーはプリズムで3色分解するので、そのためのスペースがレンズとフィルム間に必要なため。
スチル用としては、1950年にパリのピエール・アンジェニューPierre Angénieuxとカール・ツァイス・イエナのハリー・ツォエルナーHarry Zoellnerがそれぞれ別個にレフレックス・カメラ用のレンズの特許を申請した。
アンジェニューのレンズ名はレトロフォーカスRetrofocus、イエナの方はフレクトゴンFlektogonである。
1952年の末になって、オーバーコッヘンのカール・ツァイスはハッセルブラッド1000F用に超広角レンズ5.6/60mmを開発した。これが最初のDistagonである。
2.対称形レンズ
もしも、バック・フォーカル・レンクスが短くて良いなら、対称形レンズ配置を採ることにより、高性能のレンズが開発できる。
1946年にロシア人ミハイル・ロシノフMichail Roossinovが、2つのレトロフォーカスレンズを対称に配置する特許を申請した。
1951年になって、ルドヴィッヒ・ベルテレLudwig BerteleがツァイスのためにBiogonを設計した。4.5/21mm等である。
もっとも、Biogonという名が最初に使われたのは1936年のContaxレンジファインダー機用の2.8/35mmである。設計者は同じくルドヴィッヒ・ベルテレだが、これは上記の対称形とは異なる。
そのころはbio-は現代のような意味合いではなく、とてもダイナミックな写真(高速写真など)や他と違う技術的なレンズ性能を指す言葉だった。
4.5/21mmについて言えば、1950年代においてセンセーショナルな性能を示した。レトロフォーカスタイプに比べて非常に歪が少ないのが特徴である。
Biogonは設計が新しくなるにつれて、少しずつバック・フォーカル・レンクスが長くなっている。これは測光の都合などによるものである。
4.5/21mmのバック・フォーカル・レンクスはわずか9mmであった。
コンタックスG用の21mmは12mmである。
ZM2.8/21mmでは15mmとなっている。
このため、歪の値は少し大きくなっている。Biogonに多少Distagonの血が入ったといってもよいだろう。
3.伝説のレンズ
1966年のHologonはギリシャ語の"holos"から来ている。(意味は『すべて』とか『完全』)
8/15mmのバック・フォーカル・レンクスは4.5mmにすぎない。
蛇足:Dr. Hubert H. Nasseはこの他にも、プラナー、テッサー等の解説を書いている。興味のある方はGoogleして下され。みっちはもう飽きちゃったのでパスですが。(笑)
そうそう、Tessarの由来は、ギリシャ語tessares(意味は4)の頭を取ったんだそうです。
写真は Cビオゴン T* 2.8/35 ZM のパッケージから。どっちが前か分からないから、みっちがFrontとRearの文字を付け加えておきましたぁ(笑)
「風とともに去りぬ」のテクニカラー撮影のエピソード初めて知りました。テクニカラーは三原色に分解して、3本のフィルムを作ることは知っていたんですが、カメラのレンズのエピソードは初めて聞きました。
このDr.Nasseの記事は有名で、ネット上でよく皆さんがreferされています。みっちもテクニカラーの話はこの記事で初めて知りました。(汗)
英語版のWikipediaにテクニカラーカメラの側面写真が載っています.凄いです。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:3-strip_Technicolor_camera.jpg
Contax持っておられたんですね。プラナーの1.4/85mmは今でも人気ですよ。ゾナーの2.8/85mmも小型軽量で良いですよね。たしか、プラナーの1.2/85mmもあったはずです。