トリスタンとイゾルデ第2幕は最高潮-さあそこで、So starben か So stürbenか? |
その中でも最高潮となる第2場、トリスタンは自分の死によっても愛は妨げられないと歌い、それに対してイゾルデは、トリスタン『と』イゾルデの愛は、死によってどうなるのか、と疑問を出す。
ここで遂にトリスタンは、二人で死のうと言い出す、このシーンです。
トリスタンが歌う。
"So starben wir,
um ungetrennt,
ewig einig
ohne End',
ohn' Erwachen,
ohn' Erbangen,
namenlos
in Lieb' umfangen,
ganz uns selbst gegeben,
der Liebe nur zu leben!"
『かく我らは死んだ
共に一緒に
永久に一つとなり
終わりはなく
二度と目覚めず
二度と恐れず
名もなく
愛に閉ざされ
お互いに与えあい
愛のためのみに生きる!』
これをイゾルデが、
"So stürben wir,
um ungetrennt, -"
『もしも、かく我らが死んだならば
共に一緒に』
と返し、2重唱になっていくのだが、さあここでトリスタンの歌の冒頭が問題。
ここで、So starben~のと、So stürben~のと2種類があるのです。
2種類あるのは間違いありません。
現に、私の持っている1995年のバイロイト(指揮はバレンボイム)はSo starben~ですし、2007年のスカラ座(指揮バレンボイム)はSo stürben~です。
各々のドイツ語字幕がそうなっているし、実際に歌手(イエルサレムとストーレイ)は字幕どおり、各々So starben~、So stürben~と歌っているように、みっちには聞こえます。
1998年のミュンヘン(指揮はメータ)はどうかといいますと、字幕が英語しか入っていない(汗)ので分からないのですが、みっちの耳ではウエストはstürben~と歌っているように聞こえます。
不思議なことに、変わっているのはこのトリスタンの歌だけで、このあとすぐイゾルデが"So stürben wir,
um ungetrennt, -"
と繰り返すところは、どの版もSo stürben~となっています。ちなみにマイアーさんは、どの版でもSo stürben~と歌っているように聞こえる。
さて問題の単語の基本形はsterben、動詞で意味はto die(死ぬ)である。
もしstarbenなら単純な過去形だし、stürbenだと接続法第2式となって、もし~だったらとなる。
つまり、
『かく我らは死んだ
共に一緒に
永久に一つとなり
終わりはなく~』
となるか、
『もしも、かく我らが死んだら
共に一緒に
永久に一つとなり
終わりはなく~』
ですよね。ここで二人は未だ死んでいないので、後者の方が論理的だとは思うが、詩的表現というのは、なかなかそう簡単には片付きませんよね。
ということで、この最高潮の場面、いささか疑念を残しつつ、みっち流の第2幕鑑賞はおしまいです。(汗)
写真は、1995年のバイロイト(指揮はバレンボイム)から、第2幕のこの辺りのシーン。マイアーさん美しいです。(嬉)
追記:DVDのデータ
Wagner: Tristan und Isolde
ドイツ・グラマフォンCatalogue No:0734439
Siegfried Jerusalem (トリスタン)
Waltraud Meier (イゾルデ)
Matthias Hölle (マルケ王)
Falk Struckmann (クルヴェナール)
Uta Priew (ブランゲーネ)
管弦楽:Orchester der Bayreuther Festspiele
指揮:Daniel Barenboim
録画:バイロイト祝祭劇場にて1995/07/03-09
以上追記終わり