ワグナーのタンホイザーTannhäuserフィナーレ |
エリザベートがタンホイザーのために身を賭して祈り、天に召される。
タンホイザーは救済され、悪魔の化身ヴィーナスは地中に消える。
エリザベートの献身をたたえる合唱が近づく。
ヴォルフラム
"Und hörst du den Gesang?"
『さあ、あの歌が聞こえるか?』
タンホイザー
"Ich höre!"
『聞こえる!』
ここでエリザベートの葬列が近づく。先頭は老いた巡礼たち、そしてエリザベートを載せた棺架を運ぶ歌い手たち、領主と騎士、貴顕たちが続く。
エリザベートを称える合唱が続く中、ヴォルフラムはタンホイザーをエリザベートの棺架に導く。
タンホイザー
"Heilige Elisabeth, bitte für mich!"
『清らかなるエリザベートよ、我がために乞え!』
ここでタンホイザーは息絶える。
杖を捧げた若い巡礼たちが登場する。この杖はローマ法王の杖で、法王がタンホイザーに『この杖に再び葉が生えることがないと同様に、地獄の快楽に耽ったお前に永遠に救いはない』と宣言したものだが、その杖は今や緑の葉で覆われている。
タンホイザーの救済が合唱で歌われ、若い巡礼たちの"Hallelujah! Hallelujah! Hallelujah!"ハレルヤで大感動のカーテン・フォール。
さて、ここで、舞台演出上の話だけれども、本当に緑の葉で覆われた杖が登場するか、という点が気になる。最近の演出ではあんまり出てこないですね。
前回紹介した、ジョルダン/ベルリン・ドイツ交響楽団Blu-ray盤には杖すら出てこない。(汗)
ウェルザー=メスト/チューリッヒ・オペラ交響楽団DVD盤では、タンホイザーはエリザベートの遺髪と形見の衣類をもらって、エリザベートの墓の上に崩れるように倒れて死ぬ。巡礼がタンホイザの死顔にタンホイザーの巡礼用杖を示すが、杖に葉が生えている様子はない。(この演出は今一つ分からないですね)
昔LaserDiskで見た、レヴァイン/メトロポリタン歌劇場盤(Otto Schenk演出で、エリザベートはÉva Marton)では、オリジナル台本どおりの演出で、ちゃんと杖に葉が生えてましたがねぇ。
おまけ:
タンホイザーの解説を読んでいると、時々こんな説明を目にする。
1)エリザベートは自殺した
いくらなんでも、それはないでしょう。自殺者に神の恩寵はないです。(汗)
2)杖はローマ法王がタンホイザーに与えたもの
ローマ法王はタンホイザーに自分の杖を示して、この杖が再生することがないのと同様に、お前に救いはない、と言ったのであって杖をくれたわけではない。タンホイザーを救済したのは神であって、法王ではない。エリザベートが直接神に掛け合って、タンホイザーが救済されたので、法王はコケにされたようなものですなぁ。(汗)法王は自分の杖に一夜にして葉が生えたのを見て驚き、巡礼を送ったのだと思われる。
3)杖に葉が生え花が咲く
流石に花は咲かないでしょう。緑の葉で覆われるだけです。(笑)
写真はウェルザー=メスト/チューリッヒ・オペラ交響楽団DVD盤のフィナーレから。タンホイザーはPeter Seiffert。大熱演です。(笑)
いやぁ、これは寡聞にして、観て(聴いて)おりません。
>最後に出てくる杖に一枚(多分)付いていた緑の葉が...いかにも造花ぽかった
(笑)、はい、これはまあ仕方がないような気もいたしますが。
このリンク↓
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/classic_concierge/2012/199/
の下の方にある、「台本通りのクライマックスとなる第3幕の幕切れの場面」ってのが、そうなんでしょうか。
確かにエリザベートの身体が、オープンの棺架に載せられているようですね。
ここは、忠実に台本どおりという演出は少ないように思います。
>これ以降は劇場から足が遠のくばかり...
実演はやっぱり愉しいですよぉ。(笑)
この3月には、やはり神奈川県民ホールで、ミヒャエル・ハンペ演出「さまよえるオランダ人」が上演されます。みっちも行くつもりです。(嬉)
なにせ、ご贔屓の橋爪ゆか様がゼンタを歌われますので。(笑)
分かってはいるのですが、演出に腹が立つと音楽も台無しに。
最近は完全に引きこもり生活です(笑)。ミヒャエル・ハンペの「オペラの学校」(知らなかったのですが)では、某ブログの表現を借りると「今世界中のオペラハウスで上演されているオペラの演出は、ほとんどが間違ったものだ」(愉愉愉)。「オランダ人」もあまり好きな作品でもなく目に留まりませんでしたが、どうしようかと。