シャーロック・ホームズの外典をもう一つ訳してみました、今度の訳者はChatGPT君です、の巻。 |

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2023年 06月 01日
![]() ワトスンの推理法修業 アーサー・コナン・ドイル(著) ワトソンは朝食のテーブルに座った以来、相棒をじっと見つめていた。ホームズは偶然上を見上げ、彼の視線に気づいた。 「さて、ワトソン、何か考え事でもしていたのかい?」と尋ねた。 「君のことを考えていたんだよ。」 「僕のこと?」 「そうだよ、ホームズ。君のそれらのトリックは表面的だと思っていたんだけど、それにも関わらず人々がまだ興味を持ち続けているのはすごいと思ったんだ。」 「まったく同感だよ。実際、自分自身が同じようなことを言った記憶があるような気がするけどね。」 「君の手法は実は簡単に身につくんだよね。」 「確かにさ。君も自分の推論の方法を教えてくれるんじゃないかと思ったんだが、どうだい?」 「喜んでさ。今朝起きたとき、君はかなり考え事に夢中だったよ。」 「なるほど!それをどうやって知ったんだい?」 「普段はきちんと剃るんだけど、今日は忘れていたからさ。」 「おお、うまいこと気づいたじゃないか。ワトソン、君はこんなにすぐに学べるとは思わなかったよ。他に何か気づいたことはあるか?」 「そうだな、ホームズ。君のクライアントにバーロウっていう人がいて、彼の事件ではうまくいっていないみたいだよ。」 「おやおや、それをどうやって知ったんだい?」 「封筒の外側に名前が書いてあったんだ。それを開けたとき、君はがっかりして顔をしかめながら急いでポケットにしまったんだよ。」 「すばらしい!君は本当に鋭い観察力を持っているな。他には何かあるかい?」 「恐らく、君は金融投機に手を出しているんじゃないかと思ったんだ。」 「それをどうやってわかったんだい、ワトソン?」 「新聞を開いて、金融のページを見て興味津々の声を上げたからさ。」 「なるほど、君は本当にうまいこと気づくな、ワトソン。他に何かあるかい?」 「もちろんだよ、ホームズ。君は着替えのローブではなく黒いコートを着ているから、重要な来客がすぐに来るということを示しているさ。」 「他には?」 「もちろん、ホームズ、他にもいくつか気づいたことはあると思うけど、君と同じくらい賢い人間が世界にはいるってことを示すために、これだけを教えてやるよ。」 「そして、そうでない人間もいるってことだな。「ホームズは言った。「それらは数少ないとは認めるが、残念だが、君もその中に入るということだ。」 「何を言っているんだ、ホームズ?」 「まあ、君の推論が思ったほど当たっていなかったということさ。」 「つまり、僕が間違っていたってことか。」 「ちょっとそういうことさ。それでは、順に説明してみよう。剃刀を研ぐために送ったから剃らなかったんだ。コートを着たのは、残念なことに、早い時間に歯医者との予定があるからさ。彼の名前はバーロウで、手紙は予約を確認するためのものさ。クリケットのページは金融ページの隣にあるから、サリーがケントに対してどうかを調べるために見たんだ。でも、続けてくれ、ワトソン、続けてくれ!これは表面的なトリックだから、君もすぐに身につけられるさ。」 (終) どーでしょうか、ChatGPTの日本語、なかなか見事ですねぇ。当たり前ですけど瞬時に翻訳されます。実は最初ChatGPTに頼んだときには、やけに丁寧な口調で翻訳されました。これはちょっと違うな、ということでもっとくだけた、親しい調子で書け、と頼んだのです。「ホームズとワトソンは長年の友人だから、そんな他人行儀な物言いはせんぜ」「それもそーどすなぁ」「もういっぺんやり直してみ」「へい」、てな具合でこの訳文ができたのです。(笑)まぁ、dressing gownは「着替えのローブ」よりは、「部屋着」あたりの方がいいだろー、とかサリーやケントは地名だからたぶんそこのクリケット・チームのことだよ、とかありますけど、枝葉末節のことですよねぇ。 翻訳者不要の時代ももうすぐそこです、記事冒頭の画像は、鎌倉ではない、ロンドン・ベーカー・ストリートのシャーロック・ホームズ博物館であります。 #
by mitch_hagane
| 2023-06-01 00:18
| 5.本
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2023年 05月 31日
![]() まずそうなると、ふつうにはこんなところでしょうなぁ。 映像盤: 1)DVDレヴァイン・VPO(1982年)ジャン=ピエール・ポネル演出、TDK盤 ![]() 2)DVDサヴァリッシュ・バイエルン(1983年)アウグスト・エファーディング演出、ユニテル原盤 (記事冒頭の画像はこのDVDです) 音だけですと、これらです。 3)CDロンバール/ストラスブール・フィル(1978年)Disques Barclay盤 ![]() 4)CDハイティンク・バイエルン(1981年)デジタル録音、EMI盤 ![]() 5)CDアーノンクール・チューリッヒ歌劇場(1988年)TELDEC盤 ![]() さぁどうする、みっちはDVDというのはあまり好きではないです。音だけ聴けばよいなんて云ってもねぇ、それでここはパスするとなると、CDは3種類ですな。 ロンバール/ストラスブール・フィル盤は凄い豪華キャスト、キリ・テ・カナワ、キャスリーン・バトル、クルト・モル、ペーター・ホフマン等々、しかし世評では音質悪いんだそう。何だかへんてこりんなレーベルで、LP時代のアナログ音源というのはいいとしても、今頃初CD化ってのも引っかかります。パスだな。 ハイティンク・バイエルン盤は、まぁ有名、ジークフリート・イェルサレム、ルチア・ポップ、ハインツ・ツェドニクなんてのも渋い、あれっ、これは1981年デジタル録音かぁ。(汗)みっちはデジタル初期の録音ってのは、たいてい避けるようにしているのです。パスだな。 となると、残るはアーノンクール先生のしかないじゃないですか。 これ大丈夫なんだろうか。(笑)歌手陣はマッティ・サルミネン、バーバラ・ボニー、なかなかの感じ、問題はアーノンクール自身にあります。(笑)まぁしかし一丁買ってみるか、ということでこれにしました。ディスクユニオンの店頭受取、中古のCD3枚組で680円だって。国内盤だが帯がついていないらしい。こうなると製品の瑕疵ということで、100円ほど安くなるのです。まったく、帯というのは国内盤にとっては欠くべからざる大切なものでありますからなぁ、およそ帯のないCD盤なんて、たとえ夢の中でも想像することもできない一大悲惨事、永久の眠りについているアーノンセンセも棺桶の中でガタッと動くほどなのであります、あーっ帯なしのものは1,000円くらい安くしてください、みっちがみんな買いますからね。(爆) 早く来ないかなぁ。 おまけの配役表です: 1) ペーター・シュライヤー(T:タミーノ) イレアナ・コトルバス(S:パミーナ) エディタ・グルベローヴァ(S:夜の女王) マルッティ・タルヴェラ(B:ザラストロ) クリスティアン・ベッシュ(Br:パパゲーノ) グドルン・ジーバー(S:パパゲーナ) ホルスト・ヒースターマン(T:モノスタトス) エッダ・モーザー(S:第1の侍女) アン・マレイ(A:第2の侍女) イングリット・マイアー(A:第3の侍女) ヴァルター・ベリー(Br:弁者) ウィリアム・ルイス(T:兵士Ⅰ) クルト・リドル(B:兵士Ⅱ) 3人の童子:テルツ少年合唱団員、他 ウィーン国立歌劇場合唱団 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ジェイムズ・レヴァイン(指揮) 演出:ジャン=ピエール・ポネル 収録:1982年8月21日、ザルツブルク、フェルゼンライトシューレ 収録時間:189分 画面:カラー、4:3 音声:リニアPCMステレオ 字幕:日本語、ドイツ語 2) ザラストロ…クルト・モル(バス) タミーノ…フランシスコ・アライサ(テノール) 弁者…ヤン=ヘンドリック・ローテリング(バス) 夜の女王…エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ) パミーナ…ルチア・ポップ(ソプラノ) パパゲーノ…ヴォルフガング・ブレンデル(バリトン) パパゲーナ…グットラン・ジーベル(ソプラノ) モノスタトス…ノルベルト・オルト(テノール)、他 バイエルン国立歌劇場合唱団 バイエルン国立歌劇場管弦楽団 指揮:ヴォルフガング・サヴァリッシュ 演出:アウグスト・エヴァーディング 制作:1983年 ミュンヘンUNITEL 160分カラーステレオ 3) パミーナ……………………キリ・テ・カナワ(ソプラノ) 夜の女王……………………エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ) パパゲーナ…………………キャスリーン・バトル(ソプラノ) ザラストロ…………………クルト・モル(バス) パパゲーノ…………………フィリップ・フッテンロッハー(バリトン) 弁者…………………………ジョゼ・ヴァン・ダム(バリトン) タミーノ……………………ペーター・ホフマン(テノール) モノスタトス………………ノーバート・オース(テノール) 第一の侍女…………………ヘレナ・ドーセ(ソプラノ) 第二の侍女…………………アン・マレー(メッゾ・ソプラノ) 第三の侍女…………………伊原直子(アルト) 第一の武者…………………Herbert Becker(テノール) 第二の武者…………………Vladimir de Kanel(バス) 第一の神官…………………ジョゼ・ヴァン・ダム(バリトン) 第二の神官…………………Moises Parker(テノール) 3人の童子……………………チューリヒ少年合唱団 ライン歌劇場合唱団 アラン・ロンバール(指揮) ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団 【録音】1978年5月29、30日、6月1-3、5-7日、フランス、ストラスブール、Palais de la Musique et des Congres 4) ザラストロ:ロラント・ブラハト タミーノ:ジークフリート・イェルサレム パミーナ:ルチア・ポップ 夜の女王:エディタ・グルベローヴァ パパゲーノ:ウォルフガンク・ブレンデル パパゲーナ:ブリギッテ・リントナー モノスタトス:ハインツ・ツェドニク 弁者:ノーマン・ベイリー 第1の僧侶:ヴァルデマール・クメント 第2の僧侶:エーリヒ・クンツ 第3の僧侶:アンドレ・フォン・マットーニ 第1の武士:ペーター・ホフマン 第2の武士:オーゲ・ハウクラント 第1の待女:マリリン・リチャードソン 第2の待女:ドリス・ゾッフェル 第3の待女:オルトルン・ウェンケル 3人の童子:テルツ少年合唱団員 ベルナルト・ハイティンク指揮バイエルン放送交響楽団 バイエルン放送合唱団 フルート:アンドラース・アドリヤン 1981年ミュンヘン 5) ザラストロ … マッティ・サルミネン(バス) タミーノ … ハンス=ペーター・ブロホヴィッツ(テノール) 弁者 … トーマス・ハンプソン(バス) 第1の僧 … アレクサンダー・マリ(テノール) 第2の僧 … ワルデマール・クメント(バス) 夜の女王 … エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ) パミーナ … バーバラ・ボニー(ソプラノ) 第1の侍女 … パメラ・コバーン(ソプラノ) 第2の侍女 … デロレス・ツィーグラー(ソプラノ) 第3の侍女 … マリアナ・リポヴシェク(メゾ・ソプラノ) パパゲーノ … アントン・シャリンガー(バリトン) パパゲーナ(老婆) … エディット・シュミット(ソプラノ) モノスタートス … ペーター・ケラー(テノール) 3人の童子 … シュテファン・ギーンガー、マルクス・バウアー、アンドレアす・フィッシャー(テルツ少年合唱団員) 鎧を着た第1の男 … トーマス・モーザー(テノール) 鎧を着た第2の男 … アンティ・スホーネン(バス) 朗読 … ゲルトラウト・イェッセラー チューリヒ歌劇場合唱団 チューリヒ歌劇場管弦楽団 ニコラウス・アーノンクール(指揮) 【録音】1987年11月 チューリヒ #
by mitch_hagane
| 2023-05-31 00:27
| 3.音楽
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2023年 05月 30日
![]() ドイル自身によるホームズもののパロディ(2篇) 1)「The Field Bazaar 競技場バザー」(1896年) ホームズの名前は出てこないが、彼らしき人物が登場するドイル作品(2篇) 3)「The Lost Special 消えた臨時列車」(1898年) 4)「The Man with the Watches 時計だらけの男」(1898年) 今日はこの中から、「The Field Bazaar 競技場バザー」を訳してみることにします。原文は上のリンクから読めますので、邦訳のみ掲載します。 「競技場バザー」アーサー・コナン・ドイル(著) 「僕ならぜったいそうするね」、とシャーロック・ホームズ。 私はその一声に驚いてしまった、なにしろわが同居人は朝食を食べている途中で、コーヒーポットに立てかけた新聞に全神経を注いでいるように見えたのだから。見ると彼の視線は私に向けられているし、半分面白がっていて、半分は問いかけているようだった、それは彼が考えた末のコメントをしたときによくやる仕草だった。 「一体何をだい?」私は訊ねた。 彼は微笑んで暖炉からスリッパを取り、そこから刻みたばこを取り出して、古い陶器のパイプに詰めた、朝食の後のお決まりの締めくくりだった。 「もっとも君らしい質問だね、ワトソン」彼は云った「こう云っても君は怒らないと思うけれど、僕が鋭いという評判を得ているのはひとえに君のような尊敬すべき愚鈍さがあるからだと思うよ。社交界にデビューしようという女性は付き添いには不美人を選ぶと云う。確かに似ているね。」 ベーカー街の部屋で長く一緒にいるので、気安い親しさがあり、多くの場合は憤慨したりしないものだ。しかしながら、私は彼の指摘に怒りを覚えた。 「僕はとても鈍感さ、」と私は云った。「白状するが君がどうやって知り得たのか分からないんだ、僕が、僕が、…」 「エディンバラ大学バザーへ助力を求められたとね」 「そのとおり。この手紙は今届いたばかりで、君には何も云っていない。」 「それにもかかわらず」、ホームズは云った、椅子に背中を寄りかかり指先を組み合わせている。「僕はあえて云うけど、バザーの目的は大学のクリケット場の拡張だと思うよ。」 私のあまりに驚いた様子を見て、彼は声を立てない笑いで身体を震わせた。 「本当のところはね、親愛なるワトソン君、君は素晴らしい観察対象だよ。」と彼は云った。「君は決して無感動ではない。君は外からのどんな刺激にもすぐに反応する。君の知的処理は遅いかも知れないが、決して不明瞭ではない、朝食の間、僕は目の前のタイムズ紙の社説よりも君の思考を読む方が易しいと分かったのさ。」 「君がどうやって結論にたどり着いたかを知りたいものだ。」と私は云った。 「僕が恐れているのは、愛想良く種明かしをしてきて、僕の評判をいたく傷付けているんのではないか、ということなんだ、」とホームズは云った。「だが、この場合では、推理の過程はあまりに明白な事実に依っているから、評判が傷つくことはないだろう。君は何か考え事のある様子で部屋に入ってきた。心の中である事を熟慮している人の表情だった。君は手に一通の手紙を持っていた。さて、昨晩君はご機嫌な様子で辞したから、君が手にしていたこの手紙が変化の原因だということは明白だ。」 「それは自明だね」 「君に説明すると、なんでも自明になってしまうのさ。僕は自問自答してみた、こういう影響を君に与えるような手紙というのはいったいどんな内容なんだろうとね。君は封筒の垂れ蓋の側を僕に見せていた、それで盾の図案が見え、それは君の古い大学クリケットチームの帽子と同じだと気づいたのさ。それで分かった、この手紙はエディンバラ大学か、あるいは大学に関係のあるクラブか何かから送られてきたとね。君は手紙の表書きを上にしてテーブルに置き、暖炉の左にある額入りの写真を見に行った。」 彼の私の行動に関する観察は驚くばかりの正確さだった、「それで?」と私は訊ねた。 「僕はまずその宛名を一瞥することにした。すると6フィートほど離れていても、それが非公式の連絡だということが分かった。これは住所に『ドクター』という言葉が使われていたからだ、君は医学士(バチェラー)だから、『ドクター』を使う権利はない。僕は大学の事務局というものを知っている、連中は肩書きの使い方には厳密だよ。だから確信をもってその手紙は公式なものではないと分かった。君がテーブルに戻ったとき、君は手紙をひっくり返した、それで封筒の中身は印刷物だということが分かった。バザーという考えが最初に浮かんだ。僕はその前に政治的な連絡かもしれないと考えていたのだけれど、今のような動きのない政治状況ではそれはないと思ったのさ。」 「君はテーブルに戻っても表情はそのままだった、写真を確かめたが、君の今の思いを変えはしなかったのは明らかだ。そうなると、写真はいまの問題そのものに関係があるということだ。僕は写真に注意を向けた、するとすぐに分かった、君自身がエディンバラ大学クリケットチームのメンバーとして写っていて、背景は選手小屋とクリケット場だった。僕のクリケット・クラブに関するささやかな知識からすると、ここは教会とかあるいは騎兵隊旗持ちの少尉さんに並んで、この世で一番負債に苦しんでいるところなのさ。君はテーブルに戻ると鉛筆を取り出して、封筒の上に何本か線を書いた。間違いなく、君はこのバザーがうまくいった場合、競技場がどう変わるか、書いてみたのさ。君の表情にはそれでもまだ少しためらいがあったから、僕は君が良きことの手伝いをするように、アドバイスをしたのさ。 私は彼のあまりに簡明な説明に微笑まざるを得なかった。 「やっぱりね、馬鹿みたいに簡単だ」、と私は云った。 私の一言は彼を怒らせたようだった。 「付け加えて云うなら、」と彼、「君に求められたのは連中のアルバムに何か書いてくれということだろう、そしてこの件をその記事のテーマにしようと、君はもう決めているよね。」 「どうして、それが…」私は叫んだ。 「馬鹿にみたいに簡単さ、」と彼は云った、「理由は自分で良く考えてみたまえ。その間に」、と彼は新聞を手に、付け加えた、「失礼して、僕はこのとても興味深い記事に戻らせてもらうよ、それはクレモナの木材に関するもので、あそこがヴァイオリン製作に傑出していた理由を述べている。これは僕の専門外の分野なんだけれど、ときどき興味を掻き立てられるのさ。」 (終) おまけ: バザーは、この場合は資金集めのための慈善バザーを指しているようです。今ならクラウドファンディングかなぁ。英国のバザーでは、本を出したりするようです。「アルバム」と書かれているのがそれだと思います。寄付してくれた人に配るのでしょう。日本でも寄進帳とか奉加帳なんてのがあります。 「騎兵隊旗持ちの少尉 cavalry ensigns」なんてのが、金に困っている典型例の一つに挙げられています。これの理由は不明、何か社会的な問題にでもなっていたのでしょうか。 ペルシャ・スリッパにパイプ煙草を入れているとか、ヴァイオリンにうるさい(ストラディヴァリウスを持っている)とかは、ホームズお馴染みの話です。 記事冒頭の画像はシャーロック・ホームズの部屋の再現、これなんと鎌倉にあるんですって、知らなかったです。(汗) #
by mitch_hagane
| 2023-05-30 14:31
| 5.本
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