クプファーよ、三度目の正直か、仏の顔も三度までか。(笑) |
実はこの指輪を買うのは3回めである。最初は今は亡きレーザーディスク版、続いてDVD版、そして今回のBlu-ray版というわけだ。レーザーディスク版は最初は良かったが、だんだん画質に不満がでてきた。それでDVD版には期待したのだが、大して変わらぬ画質に大いに失望した。それで三度目の正直ということで、ブルーレイである。
惹句には色々なことが書いてある。大略を訳してみると『Unitelのオリジナル・ハイ・デフィニション・テープ(アナログの1250走査線)からリマスターした。現代の1080走査線フォーマットにデジタイズした後、画質を最大限高めるための修復を行った。16:9NTSCフォーマットへの標準的な変換を施している。「ラインの黄金」の最初の25分間には、所々不快なひずみが画像中にあった。これはこの公演で、舞台で使われたレーザー技術の影響である。レーザーの周波数がビデオカメラの回路に干渉したのだ。これは録画の段階で分かっていたのであるが、その時点では回避不能だったのである。』ああっ、そういえばアナログのハイ・ビジョンってあったよなぁ、と回想にふける。時の経つのは早い。(笑)
理屈はともあれ、実際見て画質はどうなの?、というと、確かに良くなった、でも現代のカミソリのようなシャープな画質を期待するとがっかりするかもしれない。なんといっても、20年前の映像で、しかも舞台の公演の撮影なので、照明の条件が圧倒的に悪いですからね。まあ、こんなものでしょう、それでも、アップになると、歌手の表情ははっきり見えます。この演出では、ヴォータンやハーゲンは、サングラスをかけているのですが、サングラスごしに目線まで見えますね。(嬉)
どうして、みっちが、このクプファーの演出にこだわっているかを、説明せねばならない。このクプファー演出・バレンボイム指揮のバイロイトの指輪は、1988年から1992年までである。このころの大きな事件として、1986年にチェルノブイリ原発事故が起こっている。だから、クプファー演出では、ジークフリートが剣を鍛える鍛冶場は、壊れた原子力炉容器を思わせるものになっているのだ。
みっちがワグナーに目覚めたのは、1987年10月-11月のベルリン・ドイツ・オペラ日本公演『ニーベルングの指輪』(演出ゲッツ・フリードリッヒGötz Friedrich) だったことは、このブログで何度も書いた。ゲッツ・フリードリッヒ演出の指輪の記録が欲しかったのだが、それはなかったので、よく似た感じのクプファー演出に飛びついたわけだ。実際、ゲッツ・フリードリッヒとクプファー演出は似たところが多い。例えば、ブリュンヒルデのワルキューレ姿は、黒のパンツルックに黒革のロングコートだ。とても良く似ている。
2002年にクプファー/バレンボイムの指輪は、日本公演をしている。この時のブリュンヒルデはデボラ・ポラスキーDeborah Polaskiだった。1991-92年バイロイト版の方は、アン・エヴァンスAnne Evansである。(バイロイト公演でも、ブリュンヒルデはこの2人だ)2002年公演は、大筋はバイロイト版に沿っているが、舞台装置はかなり変更されていた。もう原子力炉容器はなく、巨大な送風機に変わっていたし、ブリュンヒルデの岩屋のこれも巨大な丸窓など、バイロイトにはなかった仕掛けがあちこちに見られた。(グンターに扮したジークフリートが、ブリュンヒルデの岩屋に侵入する時、この丸窓が壁から外れて、前にバタンと倒れる、その迫力には息を飲んだ)
指輪四部作の中では、『ワルキューレ』が人気があるようだ。第1幕は独立して、よく演奏されるし、第3幕の前奏曲はあまりにも有名。フィナーレの炎のシーンなど、演出的にも見せ場が多い。
だが、みっち的には、やはり『神々の黄昏』である。ワルキューレほどよくまとまってはいないが、序幕でのジークフリートとブリュンヒルデの2重唱、第1幕でのジークフリート登場からグンターと義兄弟の契りBrüderschaftを結ぶあたり、第2幕でハーゲンの呼び声に応じて群衆が集まる合唱、同じく2幕のラスト3重唱でジークフリートの死が宣告され、華やかな婚礼シーンでストップモーションとなる所、第3幕でジークフリートの葬送行進曲とブリュンヒルデの自己犠牲、と見どころ/聴き所満載である。
ブルーレイ版のクプファーの指輪の概略の説明をしているだけで、今回は終わってしまった。(汗)取りあえず、今日はここまでと致します。
写真は、ブルーレイ版のクプファーの指輪のジャケット。みっちが買ったのは、KULTURレーベルでの販売となっている。これはWarner Classicsとはどういう関係なんだろう。Warner Classicsレーベルのは、添付のブックレットも分厚いのが付いているみたいだ。KULTURレーベルは、ペラペラのパンフである。この辺が価格差の原因かしらん。まあ、この業界のことはよく分かりません。(汗)