上野の森に響けマイスタージンガー!ブラボー!素晴らしい! |
これは、以下のブログ記事で前振りしてあったやつです。
『春だ。マイスタージンガーだ。そこで復習(おさらい)を少々』
小泉純一郎元首相が来られておりました。みっち的には、お会いするのは一昨年のローエングリン公演以来ですなぁ。髪型ちっとも変わってないですねぇ。(笑)
午後の上野公園、暖かい日差しの中、家族連れや年配の方で賑わっている。その喧騒を少し外れて、東京文化会館に入ると、開演前の練習中のオーケストラの響きが耳に届く。マイスタージンガーの前奏曲である。まさに時は春、心が踊ります。
何といっても、ヴァルター役のクラウス・フロリアン・フォークトが素晴らしかったです。ルックスも良いしね。(嬉)平日の昼間から、無理して聴きに行って良かったなぁと思いました。あとはポーグナー親方のギュンター・グロイスベック、安定してました。そうそう、夜警が(舞台に)出てこないけど、やけに上手な人が歌ってるなぁ、と思っていたら、彼が夜警も2役でこなしていたんですね。(汗)
ベックメッサーのアドリアン・エレート、納得の歌唱でした。ダフィトのヨルグ・シュナイダー、マクダレーネのステラ・グリゴリアン、いずれも良かったと思います。以上。
あれっ、まだ出てきてない人がぁ...うーん、みっちはあんまり悪口は書きたくないのです。エファのアンナ・ガブラー、突然の代役なんだけど、今ひとつという印象でした。エファという役はマイスタージンガーでは、それほど重要な役割ではないですがね、でも、第3幕第4場で『ああっ、ザックス、わが友、素敵な方,,,』"O Sachs! Mein Freund! Du teurer Mann!..."と歌うアリアは、それは天使のような歌声で陶酔させて欲しいなぁ。
そして、ハンス・ザックス役のアラン・ヘルドですが、申し訳ないが、みっち的にはあまり感心できませんでした。立派なキャリアをお持ちの方のようですが、ハンス・ザックス役には全く合っていないように思えてなりません。(みっち追記:どうも、ここの書き方が誤解を招いているようなので、追記します。みっちはアラン・ヘルドが技術的にどうこうとか、初めてのザックス役だからどうとか、言っているのではなく、単にドイツの親方らしくないので、合っていないと書きました。ザックスという役柄は、最もドイツらしいドイツ的な歌唱であってほしい、ということです。例えばドイツ語の発音とかも含めてです。みっちはドイツ語さっぱりですが、それでもやはりドイツ・ネイティブの歌手とは違いを感じます。以上追記終わり)
あと良かった点は、なんと字幕です。みっちはオペラの日本語字幕について、褒めたことがない(笑)のですが、今回第3幕のベックメッサーの歌の翻訳に工夫が見られました。この歌の意味は、先に上げたみっちの過去ブログでも扱ったけど、文字あそびなので、日本語への正確な翻訳は本質的に不可能です。そこで、今回の公演の字幕では、ドイツ語の元の意味はさておいて、日本語での文字遊びに切り替えているんですね。これは正解だと、みっちも思います。実際、このベックメッサーの歌の所で、聴衆から笑いが漏れていました。日本のオペラ公演では、極めて珍しいです。楽しいオペラなんだから、笑いが出て当然、歌い手も盛り上がります。(嬉)
ただ、字幕で感心したのはそこだけで、あとは、『エファちゃん』なんて表現が頻出したり、『チクショウ』とか、どうも日本語的に洗練されていないのは、...まあ、これはこの辺でやめておこう。良い点だけを見るようにしなくては。今回は演奏会形式だったので、字幕が舞台後方のスクリーン全体を使っていました。大勢が同時に歌うシーンでは、スクリーンのあちこちに字幕が表示されるので、視覚的に明瞭で、これは良かったです。(みっち注:『エファちゃん』なんて訳している理由は、原語のmein Evchen-ザックスがエファを子供の時から知っているので、親しくこう呼んでいる-なんだけれど、日本語の語感からは、単にエファだけが正解だと思います。)
そうだ、最後になったけれど、合唱もオケも乗り乗りで、楽しかった。演奏会形式のマイスタージンガーは、みっち初めてでしたが、いいですねぇ。普段オペラでは、あまりオーケストラ・ピットには目が行かないからなぁ。指揮者が乗馬ムチで引っ叩かれたりしない限り。(爆)
ということで、今回の公演感想はおしまい。
写真は、公演パンフから。ベックメッサーの歌の翻訳です。
愉しい経験談のご紹介、ありがとうございます。
>ワーグナーは若気の至りだったか(爆)と思って…
だとすると、みっちは相当まだ若いです。(笑)
>「トリスタン」CDを5種立て続けに聴き…、今「マイスタージンガー」をこれまた連続…
おーっ、やりますなぁ、こうでないといけません。(笑)みっちの過去の例では、バイロイトのクナの「パルジファル」1951年-1964年全曲通して聴取という記録があります。目が回りました。(爆)もちろん、あのときは1955年の記録だけが欠けておりました、この間やっと第2幕だけは出てきましたねぇ。
>「マイスタージンガー」を初めて観たのは1981年の二期会の上演…
みっちが初めて「マイスタージンガー」を舞台で見たのは、1988年のミュンヘンの来日公演でした。アウグスト・エヴァディングの堂々たる伝統的演出、ワルターはルネ・コロ、第3幕の白木でできた舞台装置のイメージは未だに脳裏にあります。その後2005年にも「マイスタージンガー」の公演があり、喜んで出かけたのですが、TGさん苦手の読み替え演出でした。(笑)ベックメッサーがリュートの代わりに、ラジカセ抱えて現れたのに、ギョッとしたような。(爆)
それにしても、昨今、伝統的演出というのは絶滅してしまいましたねぇ。
>「上野の森に響いたマイスタージンガー」…
この惹句は、みな使うんですねぇ。(笑)